【献身的助言でチーム結束】
 決勝戦を終えて畳を降りる際、高校時代の同級生が座る客席に笑顔で手を振った。柔道女子愛媛代表で最年長の宇高菜絵選手(32)。昨年の岩手国体決勝では自身が臨んだ代表戦で敗れただけに「より一層力が入った」。地元国体優勝への思いが人一倍強かった主将の存在が、チームを初の栄冠へと導いた。

 9月の世界選手権団体戦メンバーに選出され金メダルに貢献。その後、南米遠征に派遣された。その間に愛媛代表の遠征にも参加し、競技関係者が感嘆するほどのスケジュールで献身的にチームを支えた。「普段一緒に練習できないし、若い選手にもできるだけアドバイスしたかった」。世界女王にも輝いたベテランから何かを得ようとする若手の姿勢も感じながら、チームの結束を強めた。
 試合中は主将として常に最前列から大きな声で仲間を鼓舞し続けた。自身の試合でも、代名詞の大外刈りを含め4試合中3試合で一本勝ち。「絶対にここでポイントを取らないといけない」。覚悟を決めた決勝では、先に技ありを奪われる厳しい展開にも諦めず、残り11秒で逆転の一本を決めて両拳を強く握った。
 優勝インタビューでは「必死の応援を肌で感じた。全員が声援を力に変えられた」とメンバーを代表するように胸を張り、最後まで「頼れる主将」の姿をチーム内外に示し続けた。
 試合後、出身道場の後輩に囲まれた。「試合を見た子どもに『僕も頑張ります』と声を掛けられた」とうれしそうに話す宇高選手は「柔道を好きでいてほしい。そして感動を与える試合ができる選手に育ってほしい」とエールを送る。
 まだ現役を続けるとし、11月の講道館杯に出場する予定だ。地元国体制覇の余韻に浸りつつ「主将として臨んだ国体での優勝を自信に変えたい」と次を見据えている。